取扱業務
相続について
突然に相続問題に直面して困惑されている方が多いと思います。当事務所でも多くの相続事件の相談を受けていますが、相続に関してよくある質問、基本的な質問をQ&Aでまとめました。参考にしていただければと思います。
より具体的な質問、個別のケースに関する質問についてはお気軽にご相談ください(法律相談のしかたについてはこちらをご覧ください)。
相続 Q & A
- 相続手続きはどのように行われますか。
- 遺産分割手続きの流れを教えて下さい。
- 遺産の分割について、どのような話し合いがなされますか。
- 特別受益や寄与分という言葉をききますが?
- 特別受益についてもう少し教えて下さい。
- 寄与分についてもう少し教えて下さい。
- 動産の評価はどうするのでしょうか。
- 亡くなった父は多額の借金をしていました。これも相続しなければならないのですか。
- 遺言書の作り方を教えてください。
- 遺言書の検認とは何をするのですか。どういう意味がありますか。
- 相続人は、遺言書の内容に拘束されるのですか。遺言と異なる遺産の配分はできないのですか。
- 遺留分について教えてください。
Q2. 遺産分割手続きの流れを教えて下さい。
概ね次のような流れで行います。
①相続人の確定
→戸籍でどなたが相続人であるかを確認します。
②相続財産の調査・確認
→預貯金や不動産、株式などの遺産を調査・確認します。
③遺産分割協議書の作成または裁判所での調停・審判
→相続人全員の話し合いによって遺産分割の話し合いをします。
話がつかないときには、家庭裁判所で調停(調停委員を交えた話し合い)をすることになります。
それでもまとまらないときは、裁判所の審判(裁判官が分け方を決めます)によって決められます。
④協議や調停の結果に基づく手続き
→話し合いなどで決められた内容に基づき、不動産の所有権移転登記手続きや預貯金の払い戻し手続きなどを行います。
Q3. 遺産の分割について、どのような話し合いがなされますか。
原則は、法律で決められた相続分(例えば、夫が亡くなって、妻一人、子一人の場合のそれぞれの相続分は2分の1)に基づいて、どの財産を誰が取得するかについて、分け方を決めることになりますが、話し合いにより法律で定められた割合をかえることもできます。
分け方については、例えば不動産しか相続財産がない場合には、売却してその代金を分割することもありますし、相続人の一人が不動産を取得して他の相続人に代わりにお金を支払う(代償金といいます)ような内容になることもあります。相続分に応じて不動産を共有することもあります。
Q4. 特別受益や寄与分という言葉をききますが?
遺産の前渡しとみなされるような生前贈与がある場合(特別受益)や、被相続人(亡くなった方)の財産の維持や形成に特別な貢献がある場合(寄与分)には、相続人間の公平を図るために取得できる相続分が修正されることがあります。
Q5. 特別受益についてもう少し教えて下さい。
相続人の一人が、被相続人(亡くなった方)から、生前にお金をもらっていたような場合に、亡くなった時点の財産を通常の相続分どおりに分けるのでは不公平です。そこで、相続分を前渡してもらったものと考え(特別受益)、具体的な相続分を修正することになります。
簡単な例を挙げてみましょう。
例えば、父親が亡くなって、相続財産は5000万円。相続人は、兄弟2人だが、生前に兄が家を建てるときに1000万円を父親から頭金として援助してもらった場合を考えてみましょう。
亡くなった時点の相続財産5000万円を兄弟2人で半分づつ分けると、それぞれが2500万円を受け取ることとなります。しかし、それでは生前にお兄さんが、父親から1000万円をもらっていたので、結果としてお兄さんが3500万円受けとる一方で、弟が2500万円しか受け取れないことになり不公平です。そこで、1000万円については特別な受益があったものとして、相続分を修正し、亡くなった時に残っていた5000万円は、お兄さんが2000万円、弟が3000万円をもらうこととします。生前の分も合わせれば、双方が3000万円を受け取ることとなり相続人の間で公平が図られることになります。
なお、被相続人である親から生前にお金を貰っていたとしても、新築祝いなどのお祝いとしてなされるものや、挙式費用や結納金については、常識的な範囲であれば特別受益にはなりません。
Q6. 寄与分についてもう少し教えて下さい。
相続人の一人が、被相続人(亡くなった方)の財産の維持や増加に貢献したような場合に、亡くなった時点の被相続人(亡くなった方)の財産を通常の相続分どおりに分けるのでは不公平です。そこで、貢献した分(寄与分)については、相続財産から差し引いて、貢献した相続人の相続分に加えることにより、相続人間の公平を図ることになります。
親の家業に従事していた場合、不動産の購入資金や事業資金を援助した場合や、療養看護に従事したことにより財産が維持・増加した場合がよく問題となります。療養看護についてもよく質問されますが、寄与分が認められるには療養看護によって看護費用の支出をしなくてすんだというような事情が必要です。
寄与分についても、簡単な例を挙げて説明します。
例えば、父親が亡くなって、相続財産は5000万円。相続人は、兄弟2人だが、生前に兄が父親の事業を給与をもらわずに手伝ったことにより相続財産の2割、1000万円分の財産の形成に貢献したこと(寄与分)が認められた場合を考えてみましょう。
亡くなった時点の相続財産5000万円を兄弟2人で半分づつ分けると、それぞれが2500万円を受け取ることとなります。しかし、それでは生前のお兄さんの貢献が全く反映されておらず不公平です。そこで、相続財産5000万円から、お兄さんの貢献(寄与分)である1000万円を差し引きます。残りの4000万円を兄弟で2000万円づつ等分し、お兄さんはそれに加えて貢献分の1000万円を受け取ることになります。最終的には、お兄さんが3000万円、弟が2000万円をもらうこととなり、貢献した分が評価された上で、最終的な相続分が決まります。
Q7. 不動産の評価はどうするのでしょうか。
国税庁が公表している路線価や不動産業者に簡易査定をしてもらった評価額を参考に、合意をすることが多いです。
もっとも、各々の相続人が評価した金額に開きがあり、金額が合意できない場合には、裁判所で鑑定をすることもあります。ただ、裁判所での鑑定となると費用の負担もそれなりにありますので、話し合いでまとまることが多いです。
Q8. 亡くなった父は多額の借金をしていました。
これも相続しなければならないのですか。
相続が開始すると、被相続人の財産に関する一切の権利義務を原則として承継することになります。したがって、借金も相続分に応じて相続することになります。
もっとも、相続人は相続をするか否かを選択することができます。
相続が開始したことを知ったときから3ヶ月以内であれば、裁判所に申し出をして相続を放棄をすることができます。3ヶ月が経過した後でも、突然に借金の存在が判明したような場合には相続放棄が認められることがあります。相続放棄をする場合は、プラスの財産もマイナスの財産も含めてすべての財産の相続を放棄することになりますので、借金だけを放棄することは残念ながらできません。
多額の借金が借金しか残っていないような場合には相続放棄をした方がよいですし、プラスの財産があっても被相続人とかかわりを持ちたくない場合、ほとんど財産がなく借金をしている可能性があるような場合にも相続放棄の手続きを選択することがあります。
Q9. 遺言書の作り方を教えてください。
遺言は、自筆証書遺言、公正証書遺言により作成されることが一般的です。
遺言書を作成することにより、法律の定めとは異なる配分や、特定の人に財産を相続させることができます。遺産を誰にどのように配分するかを自由に定めることができます。
もっとも、法定相続人には遺留分というものがあり、これを侵害するものについては、後に紛争の種となる可能性がありますので注意が必要です(詳細は、Q12をご参照下さい)。
自筆証書遺言
自筆証書の作成は、全文を自筆し、日付を記載し、署名・押印をすること等が必要です。これらが一つでも欠ける遺言書は無効となります。自筆証書遺言は遺言者自身が作成することができるので、作成が簡便で、費用もかかりません。公正証書遺言と異なり証人が不要ですので内容を他人に知らせないことができます。一方で遺言内容の趣旨があいまいであったり、他人が遺言書を偽装したなどとの主張がなされることがあります。また、裁判所で検認の手続きが必要となります(検認についてはQ10を参照下さい)。
公正証書遺言
公正証書遺言は、証人二人の立ち会いのもとで、公証人が遺言の内容を筆記し、これに公証人、遺言者、証人二人が署名押印して作成するものです。遺言者の遺言であることを公証人が確認するので、後に遺言が無効となることはあまりありあません。一方で証人が二人必要であったり、公証人に対する報酬を支払う必要がありますので、手間や費用がかかります。自筆証書遺言と異なり検認は不要です。
Q10. 遺言書の検認とは何をするのですか。
どういう意味がありますか。
公正証書遺言以外の遺言書が見つかった時には、家庭裁判所に提出して「検認」という手続きを請求しなければなりません。封印(封筒にしまってあり、封じ目に印が押してある場合)のある遺言書の合には、家庭裁判所で開封しなければなりません。
検認は、遺言の有効、無効を決める手続きではありません。相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
法律で検認することが定められており、検認をしないと、登記所(法務局)や銀行が相続手続きを受け付けてくれませんので、不動産の名義変更や預貯金の払戻しなどの手続きができません。
Q11. 相続人は、遺言書の内容に拘束されるのですか。
遺言と異なる遺産の配分はできないのですか。
遺言書は遺言者が財産をどのように処分するかについて決めたものですから尊重するべきですが、有効な遺言書であっても、遺留分を侵害するような場合には遺留分侵害額請求の対象となります(詳細は、Q12をご参照下さい)。
また、相続人らが話し合うことにより、遺言とは異なる分割方法を決めることも可能です。
Q12. 遺留分について教えてください。
Q9で説明したように、遺言書を作成することにより、法律の定めとは異なる配分や、特定の人に財産を相続させることができます。
しかし、法律では、兄弟姉妹以外の相続人については、遺言の内容にかかわらず、法定相続分のうち一定割合を取得できるものと定めています。これを遺留分と言います。
遺留分は、上の世代の直系親族(例えば、父母や祖父母など)のみが相続人である場合は法定相続分の3分の1、それ以外の場合は法定相続分の2分の1となります。
ただ、遺留分を取得するには、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時」から1年以内に、贈与又は遺贈を受けた人に対し返還を請求(遺留分侵害額請求といいます)しなければなりません。
例えば、父親が亡くなって、相続人は、兄弟2人出会った場合に、父親が遺言で全ての財産を兄に相続させるとしていたとしても、弟は遺留分侵害額請求をすることにより遺産の4分の1を取得することができます。全ての財産が不動産(価格4000万円)だけだった場合、その4分の1を弟は取得できます。もっとも、このような場合には、不動産を共有とするのではなく、話し合いにより4分の1の価値(1000万円)を弟が兄から受け取る方法(価格弁償といいます)で解決する方法もあり、実際にはこの方法に解決が図られることが多いです。